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ドイツ人コメディアン舌禍事件に見るトルコのEU加盟と言論の自由

2016年4月17日

ドイツ人コメディアンJan Böhmermannがトルコのエルドアン大統領をシェルリーエブドが風刺したようなジョークで批判したことを受け、エルドアン大統領がドイツ政府に申し立てをして、メルケル首相が違法に当たるかどうかは司法に委ねるとしながらも、コメディアンを不敬罪で起訴する決定をしたことが話題になっています。

ドイツ人舌禍事件の背景は、難民問題、言論の自由、シリア問題が複雑に絡まりあった政治のリアリズムで、メルケル首相の政治生命もかかった事件です。

シリア難民や移民がEUへ押し寄せていることを受け、EUを代表してメルケル首相がトルコのエルドアン首相に難民や移民をトルコ内に留めておくよう要請し、それと引き換えにEUが670億ドルもの援助をトルコ政府に約束しました。これによりEU域内を自由に行き来できるシェンゲン条約が破綻せずEUの存続が維持できました。

さらに、エルドアン大統領はドイツをテコに使いEUを動かそうとする気配を帯び始めてきています。ドイツの刑法によれば、ドイツ人が外国の国家元首を誹謗中傷したときにかぎり中傷された国家元首の申し立てがあればドイツ政府は不敬罪として起訴できるという条文が刑法にあります。エルドアン大統領はこの古めかしい条文を利用してドイツ人コメディアンを訴えました。刑が確定すれば3年以上の懲役刑になります。

エルドアン大統領はトルコの有利な立場を最大限に活かしドイツに譲歩を迫っています。難民問題、移民問題、シリア問題はトルコの協力が必要不可欠であり、トルコが協力する見返りにトルコ人がEU域内を旅行する際のビザなし渡航をメルケル首相に認めさせ、今後トルコをEUの加盟国にするようドイツ政府に迫ってくることも考えられます。その表層として表れたのがドイツ人コメディアン舌禍事件と考えると、これからあらゆる事件がトルコのEU加盟を占ううえで指標になるかもしれません。

言論の自由は欧米各国の歴史の積み重ねで出来た文化なので欧米以外の政治体制は許容できなくこれから「文明の衝突」が起きることでしょう。

ドイツ人コメディアン舌禍事件で浮かび上がるのは、ドイツと日本の対比です。

ドイツはヒトラーのモノマネをしただけでも警察が駆けつけ、ナチスに関することはすべて違法。その流れを考慮に入れると、今回の舌禍事件を言論の自由への脅威と脊髄反射で言いづらい背景があります。

日本の刑法から不敬罪が削除されたのは1947年で、同年に日本国憲法が公布されました。GHQと日本政府の協議の末、日本から不敬罪がなくなったのにドイツに不敬罪が戦後70年も存続し続けたのは、ナチスドイツの過去があり欧州を侵略したナチスドイツにすべての罪を着せ、それを欧州の共通認識として形成しようとした名残りが未だにドイツの刑法に不敬罪として表れているのかもしれません(メルケル首相は刑法を改正して不敬罪を廃止すると表明しています)。

一方、アジアは、日本の軍国主義を中国、韓国がそれぞれ利用することで双方が内政的に利益を得ている構図になっていて、日本国内で軍国主義が完全に否定されてしまうと中韓両国が支持率を上げる駒がなくなってしまうため言論の自由が日本で存続されなければいけないという、敵同士が互いに利益を得ている関係が興味深いです。つまり、最初からアジアを統合する意思がなかったとしか思えません。


日本国憲法のもと言論の自由が保障されているおかげでいかなる思想を持っていてもドイツと同じことは日本で起きません。ドイツ人コメディアン舌禍事件は、日本国憲法で保障される言論の自由の大切さがわかる事件です。

参考文献

The New York TimesAngela Merkel, Accused of Betraying Core Values, Faces a Balancing Act With Turkey

The GuardianMerkel lets comedian face prosecution for Erdoğan poem

The TelegraphMerkel approves Turkey request for comedian prosecution

The EconomistThere once was a prickly sultan

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