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書評review

書評『エスニック・アメリカ』(有斐閣選書)アメリカの移民の歴史と多様性に向かう日本の未来

2015年6月13日

『エスニック・アメリカ』を読んだ大学時代は、グローバル化の波が少しずつ現れつつも街には外国人があまりいなく、アメリカ史の授業で学んだアメリカの現実と日本の間に高い壁がそびえていて、日本に移民が必要ということについてほとんど実感がありませんでした。過去の日記を読みながら昔を思い返してみたら、日本は着実に変わりつつあり、アメリカやイギリスのような多文化社会を少しずつ受け入れつつあることを実感しています。おそらく日本もこれから多文化社会になっていくと思います。未来を知るためには過去に同じことを経験したアメリカを調べることが一番効率良く多くを学ぶことができると思います。アメリカ史の授業で学んだ移民の歴史が、自分たちにも関係しつつあることを感じ、過去に書籍をまとめたものをもう一度読みなおしてブログにしてみました。『エスニック・アメリカ』を時系列に移民の歴史をまとめて、考察を少々書いてみましたのでお時間がありましたらどうぞ。

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ミルトン・ゴードンの1964年に出版された『アメリカン・ライフにおける同化』によると、同化には文化的同化と構造的同化という2種類があります。同化の理論はさまざまありますが、ミルトン・ゴードンに従うと「アングロ・コンフォーミティ」「るつぼ理論」「文化多元主義」の3種類に分けられます。

「アングロ・コンフォーミティ」は、移民がイギリス文化を主流とする集団、つまりホスト社会に順応していくという同化の理論です。しかし、この理論はイギリス文化に順応できない者を排除するための人種差別主義や移民制限に利用された側面があります。

一方、さまざまな人種・文化が溶け合い新しい「アメリカ人」になるべきだというのが「るつぼ理論」の核となる考えです。しかし、どの程度混ざり合うのか、主成分となるのは何か、初めからるつぼに加われない集団はどうするのかなどあらゆる問題が考えられます。

最後に「文化多元主義」は、先祖からの伝統、文化は不変であり人種、民族はオーケストラの諸楽器にたとえられ、他民族との調和を強調するという理論です。この理論は理想を追求しすぎた面があり、明確なヴィジョンに欠く側面がありました。このような欠点を補うものとして現れたのが、1950年代後半から1960年代の新しい多元主義です。

ヨーロッパ人と接触する以前のアメリカ先住民は、高度に発達した文化を保持していました。しかし、ヨーロッパ人の入植以来、疫病などにより人口は激減しました。ヨーロッパ人の土地収奪に抵抗を繰り返しましたが、それが「野蛮」というイメージに利用されてしまいました。

一方、ヨーロッパ人は、「新世界」をユートピアと位置づけ、特にイギリス人は自民族中心主義にのっとった土地収奪や先住民の改宗を推し進めました。

アメリカの黒人のルーツは、奴隷として強制的に連行されたアフリカ人に求めることが出来ます。当時のアフリカには、高度に発達した経済機構があり、また奴隷制(アメリカにおける奴隷制とは違う内容)も存在しました。これがアメリカにおける奴隷制の基礎になりました。

イギリス領アメリカ植民地のエスニック別人口構成を1931年に委託を受け分析したハワード・F・バーカーとマーカス・リー・ハンセンによりますと、1790年当時グレート・ブリテン及び北アイルランド出身者は74%ほどであり、その他をスウェーデン・オランダ系、フランス系が占めていました。(人口の20%を占めていた黒人は除きます。)しかし、最近の研究で明らかになったのは、1930年代には移民制限論の影響でイギリス系人口を多く算出してということです。1790年当時の人口構成に関しては文化的には優勢であったイングランド出身者は全白人人口の60%に及ばず、考えられている以上に多様であったという見方が有力です。出身階級に関しても修正が加わり、従来の下層階級からある程度の地位のあった者が年季奉公人になったという見方が最近主流になっています。

アメリカが新国家として安定期に入るのは、独立戦争後というより1812年の第二次米英戦争後です。その理由は、独立戦争後の混乱とヨーロッパにおけるフランス革命とナポレオン戦争の影響が、移民の流入を制限していたからです。

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1814年のナポレオン戦争終了後、ドイツ人、アイルランド人が移民の大半を占めました。アイルランド系移民はカトリック教徒であったため、移民に対する批判や攻撃の対象となることが多かったようです。このようなネイティヴィズムは、政治面においても移民の政治参加を制限する「ノー・ナッシング党」という形となり表れました。

南北戦争後合衆国憲法修正第十三、十四、十五条が成立し、黒人が「合衆国人」として認められました。しかし、南部においてはジム・クロウなどの人種隔離政策がとられました。一方、ワシントンやデュボイスなどによる黒人運動も盛んになりました。

1870年代から1900年代にかけてイタリア系、ロシア系などの南欧、東欧からの移民、中国や日本のアジア系移民などの「新移民」の流入が顕著となります。これらのプッシュ要因として経済的困窮や政治上、宗教上の抑圧などがあります。プル要因は、低賃金の非熟練への需要、「アメリカン・ドリーム」を伝えた移民による「アメリカ書簡」、出稼ぎによる話などがあります。

それぞれの移民は、さまざまな迫害を受けながらも独自の文化を多様な方法で保持し続けました。

19世紀末にネイティヴィズムの表れが顕著になり始めます。ウィルヘルム二世がロシアをアジアに釘付けにしようとアジアの脅威を煽り立てたことが影響して、中国系、日系移民を標的にした「黄禍論」、第一次大戦後やロシア革命後に起きたドイツ系やスラブ系、異教徒であるカトリック教徒に対しての「100%アメリカニズム」、さらにネイティヴィズムを総合した形で表れた「KKK」、ネイティヴィズムが法の形をとった「1924年移民法(排日移民法)」などです。

「1924年移民法」後、ドイツのファシストから逃れたユダヤ系など移民の流入は続きました。その後さまざまな移民法が制定、修正、改正が加えられ難民などを受け入れるようになっていきました。

現在ヒスパニック系人口が最大の「外国系」エスニック集団です。「ヒスパニック系」は、メキシコ系、プエルトリコ系、キューバ系などさまざまなエスニック集団から成っています。メキシコ系アメリカ人は、テキサス分離および米墨戦争後に由来します。また、第二次大戦中の労働力不足を補うための「ブラセロ計画」も大きな影響を与えました。

非合法滞在者にある程度の申請資格があれば永久居住権を得られるという「1986年移民法改革・管理法」や親族、能力、お金のあるものに優先権を与える「1990年移民法」は、新しいネイティヴィズムの表れとなりました。

黒人や先住民に関して第二次大戦後徐々に地位が向上していきました。1954年の「ブラウン判決」は大きな影響を社会に与え、それが後に続く公民権運動、エスニック・グループによる「エスニック・リバイバル」の発端となりました。

アジア系エスニック集団は他の集団に比べてはるかに急増しています。この一要因としては、1965年移民法改正による出身国割当て制の廃止があります。もう一つの要因として、難民の流入です。

1960年代半ばに特定の人種、民族集団に対し過去に受けた差別に対する補償として、優先的にマイノリティを優遇する「アファーマティブ・アクション」が雇用や教育面でとられました。これを「逆差別」だとして問題も引き起こしました。また、黒人中流層からはこの制度は優遇措置を受けることにより劣等感を残すものだとする意見も出されています。

日系アメリカ人に対する補償請求運動が1980年代に成功したことが真の平等へ向かう動きを反映する一方、二言語教育に反対する「イングリッシュ・オンリー運動」、非合法滞在者、移民に対する福祉切捨てに関する「提案187号」などネイティヴィズムの風潮も同時に表れてます。

1980年代に新しい文化多元主義を表す用語として、マルティカルチュラリズムが用いられるようになりました。この概念はコアとなる文化は存在せず、それぞれの文化を平等に扱うという考えに基づいています。しかし、この考えは行き過ぎると分離主義にもなりかねないとする意見も出されています。

日系移民は、アメリカ政府からリロケーションという名目で強制移住をさせられた「外国系」移民ですが、第二次大戦時の枢軸国出身のドイツ系やイタリア系移民には同じような対策が採られませんでした。この理由には、「黄禍論」や日系人が経済的に力をつけてきたことへの妬みという経済的理由など黄色人種に対するネイティヴィズムの表れのようです。

しかしながら、ロナルド・タカキのA Different Mirror(邦題『多文化社会アメリカの歴史―別の鏡に映して』によるとハワイにおいてはリロケーションが起きませんでした。その理由は、日系移民があまりにもハワイ経済に影響を与えすぎ、強制移住を強行するとハワイ経済に混乱を引き起こしてしまう恐れがあったためと思われます。

そのようなことを考慮に入れると日系人に対して行われたことは、単に人種的なネイティヴィズムだけではなく経済的ネイティヴィズムによるところが大きいと思われます。

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日本もおそらくアメリカが辿った移民の歴史をこれから経験していくはずなので、先人であるアメリカに学ぶべきことが多いと思います。差別主義者を肯定するわけではありませんが、「差別主義者」と言われる集団も歴史学の用語ではネイティヴィズムと言います。歴史の経験を積むことで徐々に異なる文化の人も同じ社会の一員になっていくのではないでしょうか。奴隷制、迫害、日系移民の強制移住を経験して現在の移民大国アメリカがあります。アメリカから学ぶとしたら、多様性を受け入れるためには議論によっていかに合意の形成を図るかに尽きると思います。

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